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災害時に「シェアリング」ができる被災地支援とは? 民泊やカーシェアなど可能性を探る識者の議論を聞いてきた

投稿日 : 2019年11月29日 | 最終更新日時 : 2019年11月29日

[トラベルボイス]

災害時に「シェアリング」ができる被災地支援とは? 民泊やカーシェアなど可能性を探る識者の議論を聞いてきた

シェアリングエコノミーの未来を考えるシンポジウム「シェアサミット2019」が開催された。今年のテーマは「Co-Economy: 共創・共助がつくる令和時代の新しい経済」。4回目を迎えた今年のサミットには1300人以上が来場。各セッションに加えて、エアービーアンドビー、アドレス、トラベロコ、軒先パーキング、寺田倉庫などシェアリングサービスを展開する企業がブースを出展するなど賑わいを見せた。

セッションでは、サブスクリプション、キャッシュレス、MaaS、オープンイノベーションなど現在の経済のキーワードになっているテーマが並ぶなかで、昨今多発する自然災害を受けて、「災害大国日本の共助」をテーマに防災インフラとしてのシェアリングエコノミーの役割も議論された。日本では、これまでも大災害発生後ボランティアをはじめさまざまな共助が行われてきたが、まだ課題が多いのも現実。シェアリングエコノミーの仕組みはどのように社会に貢献できるのか。

子育てシェアリングを展開するAsMamaの甲田恵子CEOをモデレーターに、自民党デジタル社会推進特別委員長の平井卓也衆議院議員、Airbnb Japan公共政策本部長の山本美香氏、日本カーシェアリング協会ソーシャルカーサポート事業部マネージャーの石渡賢大氏が議論を進めた。

できることは多いが課題も多い現実

Airbnbでは、アメリカでハリケーン災害後に医療ニーズや難民の一時シェルターに応える取り組みを行ったという。日本では、2016年の熊本地震の際に初めて災害支援を実施。100以上の現地ホストが協力した。しかし、山本氏は「被災地にはさまざまなニーズがあるし、被災者がどこにいるのか、その情報は行政任せで把握することが困難だった。また、予約可能な物件が被災者の近くにあるとは限らない」との課題を明かす。それを踏まえて、Airbnbでは現在、災害支援NPO向けに無償クーポンを配布する支援にとどめているという。

日本カーシェアリング協会は、東日本大震災を契機に設立されたNPO法人。寄付で集めた車を被災地に送り、無料でシェアしてもらうサービスを展開している。今年の台風15号と19号の被災地にも車を送った。石渡氏は「SNSなどで不必要になった車を調達するが、被災地では圧倒的に軽トラが不足する」と話し、調達できる車とニーズとのマッチングに課題があるいう。

AsMaaの甲田氏は、被災者が自宅の復旧などに集中できるように、AsMamaのサービスで子供を預かることもしているが、「そもそもこのサービスを知らない人が多い」のが課題として、ユーザーからは「行政から一元的に情報を発信してほしい」との声も聞こえたという。

平井氏は、「自治体も被災する」との現実に触れたうえで、「だからこそシェアリングの可能性は大きい」との見解を示す。被災地では民泊をはじめ、食料、駐車場、バッテリーなどシェアできる対象は多い。そのなかでデジタルイノベーションをどのように使うかがカギだとし、自民党としては、災害時のSNSの活用やシェアリングの推進などを明文化したうえで、関連法案を包括的に盛り込んだ高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)の改定を目指していることを紹介した。

(左から)AsMamaの甲田氏、平井衆議院議員、Airbnb Japanの山本氏、日本カーシェアリング協会の石渡氏

緊急時対応には平時のシェアリング理解と利用が不可欠

では、災害支援の社会基盤としてシェアリングサービスを実装していくためには何が必要なのだろうか。

Airbnbの山本氏は、「何か起きてからではなく、普段からシェアリングのサービスを使ってもらうことが必要」と話す。また、公的な避難場所として指定してもらうと被災者も使いやすいとの考えも示した。

カーシェアリングについては、石渡氏は「平時に地域で車をシェアする文化を根付かせる努力が必要」と話し、山本氏と同様に普段の生活のなかにシェアリングが浸透することが災害時にも生きるとした。また、自治体との連携についても言及。日本カーシェアリング協会は岡山県と防災協定を結び、災害時に余剰な車を有している企業に対して広報を行ってもらっているという。安全面から自治体はカーシェアリングに消極的にところも多いいが、「災害時には、行政との役割分担がはっきりしていれば、スピード感をもって支援できる」と強調した。

平井氏は、日本でもっとシェアリングエコノミーに対する理解が必要としたうえで、「シェアはいろいろな場面で役に立つ。災害のときには、そのシェアのパワーを出せれば、日本人の考え方も変わる」とコメント。シェアリングエコノミー協会が自治体や企業と包括的な防災協定を結ぶこともアイデアのひとつとして提案した。

AsMamaは自治体と協定を結び、子育ての地域活動家の掘り起こしを行っているという。甲田氏は「平時のときの情報共有と子育ちの基盤づくりをしておくことが災害時に生きる」としたうえで、ユーザーだけでなく、「ホストが増えてこそ、災害時のシェアのパワーになる」との考えを示した。

今年のシェアサミットには36社がブースを出し、自社ビジネスを紹介した。

トラベルジャーナリスト 山田友樹