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外国人2人に1人は日帰り⁉ 京都が「宿泊需要」を取り逃すワケ

投稿日 : 2019年8月17日 | 最終更新日時 : 2019年8月17日

[幻冬舎ゴールドオンライン]

2019.8.16

外国人2人に1人は日帰り⁉ 京都が「宿泊需要」を取り逃すワケ

本連載では、伝統的な京町家を宿泊施設して保存・再生する事業を数多く手がけてきた児玉舟氏の著書、『最強の京都「町家」投資』から一部を抜粋し、投資先としての京都「町家」の魅力と具体的な運営方法について解説します。今回は、京都のインバウンド需要を取り逃がす要因にもなっている「宿泊施設建設」の難しさについて見ていきます。

「違法民泊」に対して作られた独自の規制とは

京都市内の宿泊施設の稼働率(2017年)は、平均88.8%でした。最繁忙期(4月)は94.6%とさらに高く、事実上どこも満室に近い状況です(公益社団法人京都市観光協会「京都市内外国人宿泊状況調査」より)。

 

宿を予約しようにも空室を見つけられないため、京都での宿泊を諦めるケースが多いと考えられます。2016年に行われた京都観光総合調査によると「京都に泊まりたいけれど泊まれない」という外国人旅行者の割合は15.9%にのぼっており、多くの需要を取り逃していることが分かります。

 

その証拠として、日帰り客の急増が挙げられます。2015年に京都を訪れた外国人旅行者のうち、日帰り客は約3人に1人でした。ところが2016年になると約2人に1人と、その割合が跳ね上がっているのです。

 

宿泊需要の受け皿が足りない京都の事情に乗じて広がっているのが、違法民泊です。これを受け京都市は、2015年12月から翌年3月にかけて「京都市民泊施設実態調査」を実施しました。報告書によると、「Airbnb」「VRBO」などの仲介サイト上で、市内には2702件の民泊施設があり、そのうち所在地が特定できたのは、半数に満たない1260件のみでした。

 

京都市では、宿泊に対して料金を徴収する施設について、旅館業法第3条に基づく許可を義務づけています。ところが、許可を取得して簡易宿所として運営されている物件は全体の7%に当たる、わずか189件しか確認されませんでした。また、約7割の施設は無許可営業の疑いがあり、京都市の窓口にはそれらの施設を巡るトラブルの相談が多数寄せられています。

 

京都市ではこれまで、届出を行わない「違法民泊」に対して、他の自治体に先駆け厳しい姿勢を示してきました。2017年には「京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議」を設立し、新たに独自の規制やガイドライン作りも進めています。

 

規制やガイドライン作成の指標となるのは、周辺住民への影響です。例えば、住宅地の安全・安心を守るため、特定の条件に合致しない施設には、住居専用地域での営業期間を1月半ばから3月半ばまでに限定する、といったルールが設けられました。

 

また、緊急時に管理人もしくは事業者がすぐに対応できるよう、施設近辺への常駐を民泊認可の要件にする予定です。2018年2月の市議会では、この「駆けつけ要件」について、管理人もしくは事業者の居場所を「10分程度で到着できる場所」とする案が可決されました。

 

一定以上の資本や人材を確保できない事業者がこうした条件を満たすのは難しいため、マンションの一室を民泊に転用するなど、個人が安易に参入できる民泊経営は、今後急激に減少すると考えられます。

 

京都市では専用の窓口を設けて、民泊に関する市民からの通報や相談を受け付けるほか、既存の簡易宿所について、運営状況を調査するための予算を計上しており、民泊の規制をさらに強化する姿勢を見せています。

京都「宿泊施設建設」独特の難しさ

外資ホテルの建設ラッシュが続く一方で、京都での宿泊施設建設にはいくつか難点があります。投資を考えるうえで、押さえておきたい点をまとめておきましょう。

 

●宿泊施設に利用できる用地が不足している

 

宿泊施設不足がもたらす問題については、官民多くの関係者がすでに気づいており、対策に苦慮しています。インバウンドがさらに盛り上がると予測されている2020年に向け、宿泊施設の拡充に迫られながらも、京都ではなかなか効果的な対策が講じられていません。

 

(図表1)を見て分かるとおり、近年、旅館数、ホテル数はほぼ横ばい、大幅に増えているのは私たちが手がけるような簡易宿所だけです。

 

ホテルなどの大規模な宿泊施設が増えない要因として、一番に挙げられるのは用地の問題です。京都市は三方が北山、東山、西山に囲まれたコンパクトなエリアで、大きな空き地がほとんどありません。また、住居専用地域には宿泊施設を建設できないなどの規定があるため、大型の宿泊施設を設けられるような土地がそもそも非常に稀少なのです。

 

京都市役所HP「許可施設数の推移」(平成29年6月末現在)より作成

[図表1]京都市旅館業施設数の推移京都市役所HP「許可施設数の推移」(平成29年6月末現在)より作成

 

●地価高騰でさらに用地取得が困難に

 

外国人旅行者の増加から、インバウンド需要が見込める稀少な不動産の価格は、近年高騰しています。2017年には商業地の基準地価上昇率で、京都市伏見区の深草稲荷御前町が29.6%を記録し、堂々の国内1位にランクインしました。伏見稲荷大社がある同エリアは、京都市内でも外国人旅行者が多く訪れるインバウンド需要の一大拠点です。トップ10にはそのほかにも下京区25・3%など京都市内の4エリアがランクインしており、全国と比較しても、京都の地価が急上昇する様子がうかがえます。

 

●厳しい建築規制が新規参入を難しくする

 

宿泊施設の建設には巨額の資金が必要です。また、運営経費を差し引いて利益を上げるには客室数を増やさなければならないため、一般的には高層階のホテルを建設します。ところが京都には、観光資源である景観を保全するため、建物に対する厳しい高さ規制が設けられています。京都市の中心部では最大でも31mと定められているほか、中心市街地の大半は15m以下の規制地域です。宿泊施設を建てても、経営上必要な部屋数を作ることが非常に難しいのです。

 

さらに、美観地区や眺望景観保全地域、屋外広告物規制区域では、建築物の外観や看板の色彩やデザインなども厳しく制限されているため、新たな建物を建築するのは容易ではありません。そのため同じ資金をつぎ込むなら、高さ規制が少なく、色彩やデザインの自由度が高い大阪に、と考える事業者も少なくないのです。

京都の宿泊事業は大手外資ホテルしか進出できない理由

これまで解説したとおり、京都は国内のみならず世界でも有数の観光都市です。世界的な旅行ブームが続くなか、インバウンド景気の恩恵を享受してきましたが、近年は宿泊施設不足のせいで、伸び悩みが見られるようになりました。需要が供給を大きく上回っているにもかかわらず、京都における宿泊業はまだまだ開拓者が少ないブルーオーシャンといえるでしょう。

 

しかし、国内でも有数の高い地価に加え、景観保全のために設けられた厳しい建築規制によって新規参入の障壁が高く、資力を持つ大手外資ホテルしか進出できないというのが現状です。

 

そこで、小資本でも宿泊業に参入できるよう民泊の整備が進められていますが、現状は前述のとおり課題が山積しており、このような京都の状況に合うビジネスプランの拡充が待たれている状態です。

 

そのようななかで近年、注目を集めているのが「町家」です。先述の京都市の民泊規制では、家主が居住する既存のタイプは規制の対象外とされました。また、住居として歴史的価値のある町家についても特別な制限を設けず、宿泊施設への転用を推進する方針です。

 

町家については近年老朽化や空き家の増加が問題となっており、京都市としては宿泊施設への転用を後押しすることで、街並みの保全と宿泊施設不足の軽減という「二兎」を狙おうとしているのです。

 

児玉 舟

株式会社レアル 代表取締役

株式会社レアル 代表取締役

1969年生まれ。建築・不動産会社に15年勤務した後、2013年京都にて株式 会社レアルを設立、代表取締役就任。少子高齢化の進行による空き家の増加に着目し、伝統的な京町家を宿泊施設として保存・再生する事業を手がける。建築・不動産業界での経験を強みとして、「鈴(りん)」「Rinn」のブランドで立地開発から設計、建築、運営まで一貫して行う事業をいち早く確立。事業開始からわずか2年でホテル13棟を含む47の宿泊施設を開業、2020 年度中にさらに100施設の開業を計画している。伝統的な京都の街並みを守りながら地域に溶け込み、地場産業と連携してインバウンド事業に取り組む姿勢が、多くの投資家の共感を集めている。

Airbnb 日本では「民泊新法」が施行されたが、Airbnbの物件数は増加している。 BigTunaOnline/ Shutterstock 民泊仲介サイトのAirbnb(エアービーアンドビー)は8月10日、全世界での一晩の宿泊者数が400万人を突破したと発表した。一晩の宿泊者数としては、過去最高だという。 世界の人気都市の中でも東京と大阪はトップ10に入っており、1つの国から2都市がトップ10に入っているのは日本だけだという(2019年6月のデータより)。 2008年に設立されたAirbnbは、2014年に日本上陸。シェアリングエコノミーの代表格として注目を集めてきた。しかし、2018年6月、一般住宅の空室や空き家を宿泊施設として利用する場合のルールを定めた「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行。 この民泊新法のあおりをうけ、Airbnbに掲載されていた多くの物件がリストから姿を消した。2018年まで右肩上がりだった物件の掲載数は、新法施行の前後に一気に8割減の1万3800件にまで激減したとみられる(日本経済新聞、2018年6月4日付)。 Airbnbが発表したデータによれば、民泊新法による物件数の落ち込みは、この1年で、施行前の数を超える水準にV字回復しているという。 2019年6月時点で、Airbnbに掲載されている物件の件数は約5万件、予約できる室数は約7万3000室へと増え、いずれも過去最高をマークした。 その大きな要因となったのが、企業とパートナーシップを組むことによるサービスの拡大だ。パナソニックホームズなど物件を貸し出す64社を中心に計117社と提携し、事業会社系物件のマッチングも担う。「Airbnb Partners」と名付けられたこの枠組みは、世界で唯一日本だけが展開している。 外資コンサルで活躍する女性クリエイターに聞く「デザインの可能性」 Sponsored 外資コンサルで活躍する女性クリエイターに聞く「デザインの可能性」 “民泊の旗手”として拡大してきたAirbnbがこれから見据えるのが、民泊にとどまらない「体験」を重視したサービスの拡大だ。 Airbnb 自分が持っているスキルを「体験」として売り出すことができるように。 出典:Airbnbウェブサイト 現在、Airbnbのサイトでは、「宿泊」の他に「体験」さらに「レストラン」の検索も可能になっている。掲載されている「体験」を見てみると、秋葉原のアニメの聖地を巡るツアーや新宿で居酒屋をハシゴするツアーなど、訪日外国人に人気のありそうなものが目立つ。 2016年から始まったこの「体験」は現在、世界の1000以上の都市で、4万件以上が予約可能だという。 さらに、高いクオリティーのホストを認定する「Airbnb Plus」、一泊数十万円規模のラグジュアリー物件が予約できる「Airbnb Luxe」を開始するなど、宿泊においてもより「体験」を重視したサービス展開に舵を切っている。 2019年内の上場も噂されるAirbnb。民泊にとどまらない事業展開で、シェアエコの新しい形を示すことができるのか。 関連記事 USJの遊び方に“異変”? 理由は 「インスタ映え」と「格安年パス」 (文・西山里緒)→