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過疎地でワイワイむら興し 遊びの拠点に アスレチック、ピザ窯、ログハウス 徳島県美波町 5戸の椿谷集落

投稿日 : 2019年7月20日 | 最終更新日時 : 2019年7月20日

[日本農業新聞]

住民と若者が手作りした「春田ランド」。アスレチック施設を紹介する春田さん(手前)や鈴木さん(奥中央)たち

 わずか5戸だけの徳島県美波町椿谷集落に、木や石など地域資源を活用したアウトドア活動や里山体験ができる“農山村版レジャーランド”が完成した。過疎集落に再びにぎわいをもたらそうと模索してきた農家に、若者たちが協力し、耕作放棄地を遊びの拠点に一変させた。本格的なアスレチックを中心に、大人も子どもも楽しめる総合的な自然体験ができる場として、8月にオープンする。

住民と若者が手作り

徳島市から車で約2時間かかる同町中心部を、さらに奥に進んだ山間部に集落はある。50年前には約40人いた住民は現在、5戸14人に減り、水田や果樹園の大半が耕作放棄地になってしまった。

そんな過疎地域にレジャーランドを造った中心人物は、ユズ農家の春田裕計さん(60)。「なぜこんな山奥に自分を生んだんだと親を恨んだ時期もあったが、年を重ねてみると、山があり川も農地もある古里の魅力を残したいと思うようになった」と春田さん。6年前から子どもが遊ぶ場をつくりたいと模索してきた。もともと電子回路設計を仕事にし、手先が器用だったことから、木材を切ったり他地域のアウトドア活動を研究したりしてきた。

転機は3年前。春田さんが栽培するユズの販路の一つとして、同町で飲食店を営む鈴木健宏さん(32)を紹介されたことだ。鈴木さんは、山奥でも夢を抱き地域資源を活用する春田さんの姿に感銘を受けた。鈴木さんは「自然を生かす春田さんの生き方を自分も学びたいと思った。人工知能(AI)もいいけれど、里山の技や知恵を新たな形で残すことに関わりたくなった」と振り返る。

春田さんに教わり2人で作業道を作り木材の搬出を手伝ったり、ログハウスやバンガローを造ったりしていくうちに、町内外の若者たちや徳島大学の学生らが集落に集うようになった。集落外から若者が来ると、料理や作業の指導などで近所の住民たちも参加する機会が増え、計画は一気に進んだ。

通称「春田ランド」と呼ばれる施設は、5ヘクタールの農地や山林を活用した。鈴木さんは「昔から伝わる地域資源に寄り添って生み出された、いにしえの技術に、自分たちの感性を結び付けた農山村ならではのレジャー施設」と解説する。木の間に張ったワイヤロープを滑車を使って滑り降りる「ジップライン」などのアスレチックの他、ピザ窯や飲酒ができるバー、陶芸体験施設などを完備。ドローン(小型無人飛行機)操縦体験、まき割りや山菜採り、川遊び、ユズ搾りなど多様な農林業体験が楽しめる。

金属以外の木や土、石といった材料は、地元で調達。今後はバンガローやツリーハウスも造る予定だ。春田さんは「若者たちが来ると実現までのスピードが全然違った。若者たちがワクワクして“自分ごと”として参加してくれ、温めていた夢がかなった」と笑顔だ。

春田さんと鈴木さんらは会社を立ち上げてランドを運営していく。手伝った福岡県出身の同町の地域おこし協力隊の村上竜司さん(19)は「初めはビス一本打てなかったけど、春田さんに教わってバーを造れるまでになった」と胸を張る。

同町は地域づくりのキャッチフレーズとして「にぎやかそ」を掲げ、サテライトオフィスの誘致や移住者の呼び込みを進める。鈴木さんは「美波町は人口が少ないけど移住者も住民もワイワイしている。前向きな雰囲気が伝染してきた」と感じる。レジャーランドは「椿谷自然体験プロジェクト」としてインターネット交流サイト(SNS)のフェイスブックなどでアピールし、農家民泊も受け付ける。