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違法民泊は「最終局面」、新法施行1年で収益は上がったか《楽待新聞》

投稿日 : 2019年6月22日 | 最終更新日時 : 2019年6月22日

[Yahoo! ファイナンス]

2019/6/19

6月15日で、いわゆる「民泊新法」の施行から1年を迎えた。最近は大きく報道されることも少なくなってきた民泊事業だが、不動産投資家の中でも、大きな収益を上げている人はいる。
合法で宿泊事業を営むオーナーたちのエピソードから、民泊の苦労や収益を上げるための工夫、そして社会問題ともなっていた違法民泊の現状を追った。

■「半分自主運営」でコスト下げつつ

大阪市の大正エリアで、「特区」を活用した民泊事業を行っている山本正也さん(仮名)。2018年に1LDKの6室がある新築木造アパートで開業した。

「この1年間の売り上げは約2300万円です。そのうち、ローンの返済や諸経費などを支払うと、手元に残るCFは980万円でした」。物件本体の価格や、法令に適合させるための仕様変更費といったイニシャルコストなどから考えると、利回りは約16%ほどだ。

内装のコーディネート、家具・家電の選定や設営はすべてDIY。「開業直前の1週間は、家族総出で物件に泊まり込み、準備をしました。6部屋となると、かなりハードな作業でした」と振り返る。

すでに区分や1棟ものなど、10室の賃貸物件を所有する山本さん。不動産投資手法のバリエーションの1つとして、民泊に興味を持ったと言う。開業前に情報を収集していくうちに、「儲けるためには、物件を所有し、運営のほとんどを自分たちで行う必要がある」との結論に至った。

だが、本業がある中での民泊の完全自主運営は難しい。そのため、できる範囲の業務を自分たちが担うことにした。清掃スタッフへの作業の指示をしたり、アメニティーの在庫管理をしたりといったことは、妻の協力を得ながら行っているのだという。

運営をすべて委託した場合はその費用として代行会社への手数料が売り上げの15~20%程度かかるが、山本さんの場合は9%程度に抑えることができている。

■代行会社の「とんでもない回答」

ゲストとの基本的なやり取りは代行会社へ委託しているが、その内容は山本さんたち自身で常にチェックする。

「代行会社の、特に外国人のスタッフは個々の物件の概要をすべて把握しているわけではありません。例えば設備について質問をされた時に、全く事実とは異なる回答をしていたり、時には『そんな質問をしてこないでください』なんてとんでもない回答をしていたりすることもあるんです。こうした対応をホストがフォローするか否かで、ゲストの満足度は変わってきます」

代行会社がゲストの要望に対応できていない時は、自分たちで直接対応する場合も多い。

その分時間は取られるが、「ゲストとコミュニケーションを取れるので、何を求めているか、どのような対応や情報を提供すれば喜ばれるのか、といった運営ノウハウも蓄積でき、今後のためにも役立てられると考えています」と話す。

また、ゲスト満足度向上のために、妻のアイディアでアメニティーグッズを充実させた。歯ブラシやヘアブラシ、シャンプーなどから、爪やすりや入浴剤、洗濯洗剤や日本茶などのほか、乳幼児が宿泊する際にはガーゼや子供用のトランプ、折り紙なども用意。

「民泊はサービス業。いかにほかの物件よりアメニティーが充実しているかも、差別化のポイントです」(山本さん)

■民泊成功のカギ

民泊成功のカギは「間取り、立地、エリア環境」だと山本さんは指摘する。

「宿泊可能人数が2、3人だと、ホテルを含めて競合物件が多すぎます。5名以上泊まれる間取りが理想です。また、利便性の良い駅から徒歩5分以内で、かつ物件周辺にコンビニや飲食店が多いことが重要。私も、その条件で物件探しを行いました」

そうした条件で絞り込んで見つけた山本さんの物件は、ユニバーサルスタジオジャパンにも近いベイエリアにあり、最寄り駅からは徒歩3分。乗り換えなしで主要な観光地や空港に行くこともできるという。

さらに山本さんは、運営代行会社の選定も民泊成否のポイントだと話す。山本さんの場合だと、最初に5社程度の会社に連絡。最終的に担当者の質問対応能力、人間性、運営実績などを鑑みて現在の会社に決めたそうだ。

「実績を確認する際には、運営物件数ではなく、現在運営している物件をいくつか教えていただき、Airbnbなどの民泊仲介サイトでその物件のレビューを見たり、実際に物件を案内してもらったりしました」

■7万室以上が「宿泊可能」に

「民泊」は、住宅を利用して宿泊サービスを提供できる制度のことだ。日本においては、主に海外からの観光客をマンションの一室や戸建て住宅を活用して宿泊させ、宿泊料を対価としてとるビジネスが近年増加していた。

ところが、宿泊サービスを提供するためには旅館業法による許可が必要になる。

にもかかわらず、以前の「民泊」物件のほとんどが無許可で営業していた実態があり、こうした問題を背景に2018年6月15日、「住宅宿泊事業法」、いわゆる民泊新法が施行された。これまでは、旅館業法の許可を得る以外には前述の山本さんのように国家戦略特区を活用した「特区民泊」を行うことができた。だが、この特区は全国で1府と6市区に限定されていたため、初めて全国での民泊が解禁されたのだ。

民泊仲介サイトの大手である「Airbnb」も、同社共同創業者のブレチャージクCSOが、来日した際の記者会見で「日本は極めて重要な国だ。日本における宿泊可能な部屋数は7万3000室になった。今後の大規模イベントへの貢献のほか、地域活性化、空き家対策といった役割もある」と述べるなど、日本における今後の民泊事業にも期待を寄せている。

■違法民泊の現状は

気になるのは、違法民泊の現状だ。観光庁は3月、昨年9月時点の違法物件の数を公表している。この調査によると、仲介サイトが扱う民泊物件のうち、自治体への届け出情報と氏名や所在地、届出番号が異なるなどといった違法、あるいは違法の疑いが強い物件が6585件あったという。

投資家らに取材してみると、実際に「適当な認可番号を入力しているなどの違法物件はいまだにあると思う。これのせいで『民泊』に対する世間イメージが悪く、堂々と事業をやっていると言いづらい」(大阪・男性投資家)といったエピソードがある一方、「違法民泊物件はかなり排除されてきた」という声も多い。

違法民泊の監視サービスなどを行う「民泊ポリス」を運営する株式会社オスカーの中込元伸社長は現状を「以前のような違法民泊は、そのほとんどが排除されたと言って良い」と指摘する。

新法制定以前、民泊仲介サイトに掲載されている物件の多くは旅館業法に則っていない「違法」だった。しかし、昨年6月を境に、物件数は急激な落ち込みを見せる。「例えばAirbnbでは、6万件ほどあった物件数が、2万件ほどにまで激減しました」(中込社長)

新法施行後も、虚偽の申請番号を書くなどの違法民泊は一定数掲載されていたが、中込社長は「数カ月前から、違法物件らしい物件はサイト上で見かけることはほとんどなくなりました」と話す。

その理由の1つとして、中込社長は今年4月に住宅宿泊事業法が改正されたことがあるとみる。この改正では、サイトへの登録の際に従来は届出番号のみを通知していたのに加え、商号や名称、所在地といった詳細情報の通知が義務化。適法性、あるいは違法性の確認がしやすくなっている。

■「最終局面」を迎えた違法民泊、今後の懸念は

他方、特にSNSを通じて直接集客を行う違法民泊は、決して衰退してはいない。

中込社長も「特に海外に居住するオーナーによる違法民泊物件は、連絡もとりづらく、摘発しにくいので、各自治体も苦戦しているようです」と明かす。

こうした手法は集客をSNSなどに頼っているため、稼働が安定せず、事業としては長続きしづらいが、その反面「特定の手段を使わなくてはたどり着けない『ダークウェブ』上で、違法民泊物件の仲介がなされていても不思議ではありません。こうした違法物件は、犯罪者がその活動に利用するのにうってつけになってしまいます」(中込社長)との脅威があることも事実。

加えて、2020年に開催される東京五輪では、観戦客のための宿泊ニーズが増大すると見込まれるため、違法民泊物件が再び横行する可能性もある。海外旅行代理店によってこうした違法民泊物件がツアー客の宿泊先として指定されてしまえば、対策どころか摘発も困難を極める。

「違法民泊物件との戦いは、最終局面を迎えていると思います。ですが、まだ一部に残る闇を、どうにか水際で止めなければなりません。そうしなければ、せっかくクリーンになりつつある『民泊』へのイメージも、またネガティブに戻ってしまいます」と中込社長は語る。

■「収益性」にも問題、条例違反も

民泊新法における問題はまだある。それが収益性の問題だ。

全国で民泊事業を行うことができるようにはなったものの、多くの自治体では条例を制定し、民泊事業に制限をかけた。例えば規制が厳しい京都市では、住居専用地域における民泊営業可能時期を、1~2月の60日間に限っている。東京都内では「区内全域で平日の営業禁止」(中央区、目黒区、江東区)などのルールが設けられている区も。こうした規制の厳しい地域は少なくなく、収益性には疑問が残る。

このような中でもこの収益性を高めたい民泊オーナーの一部には、「条例違反を犯している人も多い」(中込社長)と言う。

つまり、条例で年間宿泊日数を定められているにもかかわらず、それを上回る日数で営業しているなどといった違反行為が見られるというのだ。民泊新法に則った営業申請は出していても、こうした条例違反が繰り返されれば、近隣住民からのクレームにもつながり、条例の締め付けが厳しくなってかえって民泊事業がやりづらくなることも考えられる。

■特区、旅館業法での「民泊」で収益増

こうした制限にとらわれずに合法的に民泊に参入したい多くの投資家は、民泊新法ではなく、特区を活用したり、あるいは簡易宿所などといった旅館業法に則った宿泊事業に参戦したりしている。

自身が新築した墨田区の1棟マンションで旅館業を営む葛西滋規さん。自身の物件である「THE SORAPIA TOKYO」の2019年1~4月の平均売り上げは月約250万円だ。そのうち3~5割程度が清掃費や光熱費、あるいは代行会社への委託手数料といった運営費用として出ていくため、月の利益は100万円ほどになる。

葛西さんは、現状について「新法施行前に比べて、収益が上がっています」と言う。特に顕著だったのは昨年の6月。新法施行が大きく影響し、違法民泊が仲介サイトから排除された結果、多くの予約客が入った。6月は通常閑散期にあたるが、売り上げは前年同月の2.5倍ほどだったと言う。

「2018年度の売り上げで見ても、対前年度比で140%となっています。違法民泊が多かったせいで下がっていた宿泊単価も、繁忙期は3000円ほど高くとれるようになってきました。新法施行以後、確実にいい影響が業界全体に及んでいると思っています。個人的な感想で言えば、やっと報われた、という感じです」

■信頼おけない業者も

もちろん、懸念がないわけではない。「インバウンド需要がいつまで続くのか、ということは1つ心配ですね。もちろん2020年は『稼ぎ時』です。しかし、ゲストの約4割は中国系。そのため、米中関係の悪化や中国景気の低迷などが起こってしまえば、訪日ゲストが減ってしまうかもしれません。国際ニュースを見てはやきもきしています」

業界全体で言えば、現在、民泊が再びブームになりつつある向きも感じるという。だが、新規参入を考える際には、注意してほしい点もあると葛西さんは話す。その1つが融資で、近年の融資情勢も相まって、民泊事業への融資はかなりハードルが高いのが現状。そのため、物件を購入するのではなく民泊可物件を借りての事業運営を考える人も多い。

葛西さん自身、規模拡大のために賃貸物件での民泊事業を検討したことがある。業者の情報によると、物件は都内中心部の立地が良いマンションで、家賃は約18万円。民泊での売り上げは月40万円にもなる想定だった。

「ですが、先ほども述べた通り運営を代行会社に委託した場合、売り上げの3~5割ほどが経費として出ていきます。そのため、コンスタントに40万円の売り上げがあったとしても、家賃や経費を支払えば、手元に残るのは多くても8万円程度。しかも検証し直したところ、この40万円でさえ繁忙期のものと思われる数字で、業者の示す売上見込みは楽観的すぎると感じました」

その上、この業者の場合はあくまで「民泊可物件」の仲介にすぎず、開業のための保健所への届け出や各種説明などは、自分で手配や実施を行わなくてはいけない手間も発生する。

「決してダマそう、ということではないのかもしれませんが、経費などについては説明不足の印象もありましたし、『今やらないと儲からない』などと煽ってくる部分もありました。業者に全てを委託した場合には、売り上げに占める経費がかなりの割合になることなどや、利益を出そうとすれば結構な手間暇がかかることを、今後民泊事業を始めたい人は十分に認識してほしいです。そして、あまり焦らずに参入してほしいと思います」

■民泊オーナーのリアルな声

7棟を所有する投資家のAさんは、民泊OKのマンションを借りての民泊運営をしている。エリアは大阪市内、特区を活用しての民泊だ。利回りは約28%と高いが、「家賃や運営費を払えば、時期によっては思ったほど利益は残りません」と明かす。

特区民泊の開業申請が通るまでに時間がかかり、その間は売り上げもないのに家賃は支払って収益を圧迫していたこともあった。

「知らない分野に進出する時には、きちんと勉強しないと損ばかりするということが分かりました。それでも、利用者の方に良いレビューをいただくと嬉しくなりますね」

同じく大阪市で特区民泊を活用するBさんは、現金で購入した戸建てを貸し出している。今年開業したばかりで、4月ごろから稼働率が80%を超えるようになってきた。

「開業も運営も代行会社に委託をしたので、特に苦労はありませんでした。それでも業者との打ち合わせ連絡も多く、アパートに比べると多少手間がかかる印象です。当初は自主開業、自主運営も検討しましたが、仕事を持ちながらではやはり難しく断念しました」

Aさんらと同様に、海外からのゲストのレビューで褒める言葉をもらった時には、「やってよかった」と感じるそうだ。

■管理規約変更の苦労

九州地方で旅館業法に則った宿泊事業を提供する投資家のCさん。現在同一マンション内に所有する4室で稼働しており、現在さらに3室でも運営を開始すべく準備中だ。

「区分で所有している分譲マンション内での事業だったので、管理規約の変更には苦労しました。理事会には必ず参加し、理事長にも接近しました。マンションの今後について、どのように価値を上げていくのかなどを相談、宿泊事業のことも話していく中で理事長に理解をしていただきました。最終的には1年ほど時間をかけて、管理会社の協力も得て、ギリギリの人数ではありましたが総会で「民泊可」の多数をいただき、民泊が可能となりました」

Cさんが所有する別の分譲マンションでは、民泊は不可の結果となったそうだ。区分マンションでの民泊では、管理規約で禁止されていないことが条件となる。禁止されている場合には変更できる可能性もあるが、多大な労力がかかることは念頭に置きたい。

前出の山本さんは、民泊事業の魅力を「収益が良いことに加えて、ゲストとコミュニケーションをとる楽しさ、どちらもあること」と話す。

昨年、西日本を中心に甚大な被害をもたらした台風21号。山本さんの物件があるエリアも、一帯が停電してしまった。当日もゲストが宿泊していたため、ゲストと仲介サイト経由でコミュニケーションを取りながら、仕事が休みだった山本さん自身が照明や飲料、発電機などを持って物件に駆け付けたのだという。

「そうやってした私の行動に、ゲストはすごく喜んでくれました。『今までのAirbnb経験で、ナンバーワンだ』というレビューをもらった時には、本当に嬉しかったですね」(山本さん)

新築物件で利回りは16%。一般の賃貸物件に比べて収益も良い。だが、利益だけを追求したり、手間を惜しんだりする人は民泊事業には向かないと山本さんはくぎを刺す。「メールをチェックして、ゲストのために行動して…想像以上に、結構手間が取られます。でも、私自身はそれを楽しんでいるので苦痛には感じません」

違法民泊が排除されつつある今、収益の上がる事業として、再び注目を集める「民泊」。しかし、民泊は不動産投資よりさらに「事業の運営」の側面が強い、というのが多くの投資家の実感だ。今後参入する際には、自分の労力と見合った収益になるかを十分に考えたい。

不動産投資の楽待 編集部