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民泊解禁巡り期待と不安 「儲からない」と撤退する個人、意欲燃やす企業〈週刊朝日〉

投稿日 : 2018年6月19日 | 最終更新日時 : 2018年6月19日

Yahoo!ニュース Japan – 2018.06.19

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180615-00000019-sasahi-life

住宅を旅行者に貸す民泊が解禁される。これまでは法的な位置づけがあいまいで、“ヤミ民泊”が広がり、トラブルも多かった。解禁に合わせ、営業日数などの規制も新設される。“ヤミ”で営んでいた人は儲け損なうが、商機に沸く人もいる。

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 JR京都駅から徒歩10分余りの住宅街。内装業を営む坂本秀浩さん(48)は住宅を自ら改装し、民泊を始めようと考えていた。営業ルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月15日に施行されるのに合わせ、日本の伝統色の朱色などを使った壁紙や建材で改装。扉も新しくして一棟貸しにする。営業前には自らも近くへ引っ越す予定だった。

しかし、今年に入って、日数や地域などに独自の規制を設ける京都市の条例が明らかになるにつれ、期待は失望へと変わった。

当初考えた家主不在型の民泊だと、宅地建物取引士などの有資格者に管理を委託する必要がある。京都市は条例で、物件の半径800メートル以内に管理者の駐在を求めている。「駐在は現実的に難しい。家主として管理しないと採算が合わない」。そう考えて開業をあきらめ、物件を売った。

新法施行を控え、営業に必要な届け出の受け付けが3月に始まったが、出足は鈍い。5月11日現在、全国で724件。観光客が多い京都市でさえ6件だ。

京都市内でゲストハウスなどの工事を手がける工務店「京滋エルシーホーム」は、新法に関する相談や問い合わせを顧客から数多く受けた。しかし、実際の工事依頼はゼロ。現在抱える工事は、これまでも認められていた旅館業法の簡易宿所として開業する物件だ。

井上大輝社長(30)は「新法での届け出をあきらめ、簡易宿所での運営に切り替える顧客が多い。今はこれ以上注文を受けられないほど忙しい」と話す。

簡易宿所とは、山小屋のように大人数で宿泊場所を共用する施設。新法による民泊は届け出で済むが、簡易宿所は許可の申請など手続きのハードルが高い。ただ、民泊の営業が年180日に限られるのに対し、通年営業できる。民泊のルールが厳しい地域では、部屋の稼働率をより高くできる簡易宿所に変える人も多い。

京都市は条例で、町家物件や家主同居型などの例外を除き、住居専用地域での営業を1月から3月の60日間に限定する。自社でゲストハウスも運営する井上社長は「国際交流目的ならば新法でも十分だが、ビジネスや投資として考えれば、規制の厳しい京都市内の民泊は、簡易宿所が主流になるだろう」とみる。

民泊はホテルより割安で、日本の日常生活に触れられると人気だ。しかし、旅館業法は住宅街での営業を認めておらず、住宅の部屋を貸す営業形態を想定していない。これまでは、旅館業法の簡易宿所の許可をとるか、東京都大田区や大阪市など国家戦略特区の地域で業法の例外として認定を受ける必要があった。

那覇市の2017年の調査では、大手仲介サイト掲載の市内の物件622件のうち、業法の許可を得ていたのは16%の100件。84%の522件が無許可だった。厚生労働省の16年の同様の全国調査でも、約83%が無許可か物件を特定できないなどだった。これまでは無許可営業が大半で、全国約6万件ほどの物件が仲介サイトで登録されていた。

新法施行が目前の6月1日、観光庁は仲介業者に対し、施行後に適法性が確認できない物件について、予約取り消しや合法物件への変更を求めるように通知した。大手の「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、自治体への無届け出物件をサイトから削除。新法施行後には掲載しない方針だったが、前倒しで対応した。“ヤミ民泊”を営む人は、宿泊客集めが難しくなる。

さらに追加で、適法性が確認できない物件に6月15~19日にチェックインする分の予約は、同社の判断でキャンセルすると決定。代わりの宿泊施設探しや航空券の変更手数料が必要となる人向けに、費用を補填するための約11億円分の基金を設けると決めた。

政府は違法民泊を取り締まるため、旅館業法も改正。無許可の事業者に対し、都道府県知事の立ち入り検査権限などを設け、罰金の上限を3万円から100万円に引き上げる。観光庁は「予約の取り消しで、旅行者が宿泊場所を確保できない事態にならないよう、情報提供や窓口紹介を進める」という。

個人の民泊運営はハードルが高くなった一方で、商機をつかむ企業も多い。

楽天ライフルステイは今月、大阪・心斎橋で相部屋タイプの宿泊施設「Rakuten STAY HOSTEL」の1号店を開業した。同社は民泊物件の仲介サイト運営や、物件保有者のサポート事業を展開している。建物の改修や運営代行を一括して担い、経営ノウハウや楽天ブランドを提供。岩手県や福井県では、空き家利用の民泊施設発掘にも取り組む。太田宗克社長は「様々な宿泊スタイル創出が我々の役割。ほかの事業者とも協力し、市場を大きくしたい」と話す。

同社と、米国系の仲介会社ホームアウェイ、全国古民家再生協会は6月、空き家の古民家を民泊用物件として再生する計画を発表した。古民家に興味を持つ欧米系の旅行者らが、安心して泊まれる施設を増やす。

不動産総合サービス「APAMAN(アパマン)」は、宿泊者名簿の作成や苦情対応など家主業務を代行する住宅宿泊管理業者の登録を申請。今後、5千室の民泊物件の管理をめざす。

新法施行で、コンビニはチェックイン業務やカギの受け渡し拠点になる。カギを受け渡しできるボックスや利用登録の情報端末を置き、宿泊客をサポートする。

訪日外国人旅行者は17年に2869万人で、5年連続で過去最多。政府は20年に4千万人へと増やす目標だ。民泊は宿泊施設不足を解消する受け皿の一つ。拡大するには、騒音やゴミのトラブルを減らす必要がある。一部の自治体は、新法より厳しい上乗せ規制を独自の条例で設けている。

兵庫県は住居専用地域での営業を全面禁止に。長野県軽井沢町は全域で通年、営業を認めない考えだった。しかし、長野県も条例を設けており、行楽期は全町で規制、そのほかの期間は住居専用地域で平日営業禁止に。同町は「町民らには全面自粛に協力を求める」。

民泊事情に詳しい広島修道大学商学部の富川久美子教授(観光学)はこう話す。

「民泊を増やしたい国と居住環境を守りたい地方であつれきが生じている。海外では民泊用物件の需要が増え、家賃が上昇し、地域住民が出ていかざるを得なくなった例もある。外国人観光客に依存する観光振興策は危うさも伴う。日本人が気軽に安心して泊まれる施設も増やす必要がある」

民泊用物件を手離す人もいれば、ビジネス拡大をねらう企業もある。不動産市場や観光産業にどんな影響を及ぼすのか、しばらく目が離せない。(藤嶋亨)

※週刊朝日  2018年6月22日号