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JTBは事業再編でどう変わるのか? 1000億円投資で目指す未来を聞いてきた、デジタル戦略からOTAとの協業まで

投稿日 : 2018年5月28日 | 最終更新日時 : 2018年5月28日

トラベルボイス(公式) – 2018.05.28

https://www.travelvoice.jp/20180528-111711

JTB代表取締役社長の髙橋広行氏は、2017年度の連結決算発表の席で、2018年4月に新グループ体制へと移行した経営改革の目的と方向性を語った。

このなかで髙橋氏は、今回の経営改革を「第3の創業」と位置付け、ビジネスモデルを大きく変えるものであることを強調。旅行造成・販売といった従来の旅行業から、「個人」「法人」「地域」「国」といった顧客の課題解決を図るソリューション会社へと転換することを明言した。

今後5年間で計約1000億円の投資を行ない、200億円規模の経常利益を安定的に計上できる事業構築を目指す。5年後の利益構造では、従来の旅行業(コミッションビジネス)とソリューション提供によるフィービジネスで半々の割合を想定しているという。

髙橋氏は改めて、ビジネスモデルを転換するほどの経営改革に至った理由として、ウェブ化とOTAの台頭、民泊を含むシェアリングエコノミーなど想定以上の環境の変化をあげ、「競合が旅行会社だけではなく、グローバル企業、異業種にも広がり、経営資源を分散していては到底、太刀打ちできない」と説明。

また、「旅行業だけの追求では限界がある」とも語り、新たなソリューションビジネスが「お客様の課題は無限にあり、我々のフィールドは一気に広がる。旅行はそのソリューションの1つになる」と、安定的利益を生む基盤となる認識を語った。髙橋氏は業界展望として、旅行会社の淘汰が進む方向にあるとの認識も示し、ソリューションビジネスへの進化によってJTBならではの価値を持つ重要性も示唆した。

ソリューションビジネスとしては、パナソニックとクロネコヤマトとの連携による手ぶら観光支援サービス「LUGGAGE-FREE TRAVEL」や、ふるさと納税「ふるぽ」など、すでに開始している事業例を紹介。手ぶら観光支援サービスは、訪日外国人の移動の際の荷物の課題に対応したもの。ふるぽは、地域の産品の販路拡大に向けた地域へのソリューションと説明した。

今後JTBでは(1)成長領域、新規事業開発、(2)デジタルトランスフォーメーション、(3)人材強化、などを中心に投資を展開。2022年度をめどに“第3の創業”の姿の実現を目指す。

既存の旅行事業はどう変わるのか?

新経営体制のもと、従来と比較して大きく変わりそうなのが、個人旅行。事業価値の再構築を主要テーマに、商品と販売の双方で改革を推進する。すでに商品では今年1月から、オンライン販売の価格変動に対応し、価格変動型の商品「ダイナミックJTB」を国内・海外で展開。ウェブ化対策が目的のノンパンフレット展開だが、「万が一、現地で何かがあった場合に、現地拠点のサポートなど安心安全を担保する商品であるのが最大の違い。これでOTAと十分に対抗できる」と強みをアピールする。

販売ではマイカスタマーの担当制とし、渉外営業を強化。店舗での販売にとどまらず、「街の営業として打って出る」方針。具体的には法人営業に個人営業が同行し、法人顧客担当者のプライベート需要を取り込む。

このほか、顧客の利用状況に応じた3つのステージ制を設け、サービスのバリエーションを拡充。店頭予約の対応や、年末年始などの希少価値の高い出発日の旅行の優先販売などを行なう。店舗展開ではより専門性、機能特化を目的とした店舗機能の最適化も図っていく。

デジタル戦略は?

JTBでは、販売チャネルとしてのウェブのサイト力強化や、デジタルテクノロジーの導入も、経営改革の大きな柱とする方針も示している。

今回、髙橋氏が言及したのは、新たな旅行販売への取り組み。コールセンターと利用客がディスプレイを介してやり取りし、商品販売を行なうリモート接客の開発に挑戦し、操作案内をするスタッフ以外は無人の店舗展開にも取り組む。また、JTBでは2016年に遠隔ロボット技術のテレイグジステンス社に出資しており、日本にいながらあたかもハワイにいるかのようなバーチャルな体験による“移動しない旅行”の取り組みも図る考えだ。

さらにテクノロジーは商品造成にも活用。商品造成は従来、ほとんどを人手で行なってきたが、国内企画商品のエースで一部、ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA:ロボットによる業務自動化)を開始した。料金計算や登録などの作業部分の一部だが、大幅な作業効率化を見込み、その分の人手を高付加価値を生み出す作業に最適化していくという。

一方、ウェブの販売力強化やデジタル人材の採用強化の意向も示しているが、自社開発に関しては「特別な専門人材はおらず、これから自社で行なっても太刀打ちできない」とし、自前の開発部門を持つことは否定。また、リスティング広告などのコストも高騰していることも踏まえ、この分野ではデジタル戦略の立案や指揮を執る人材を確保するも、販売力は他のOTAとの協業や提携などで広げていく方針だ。

記事:山田紀子