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サッカー選手の夢破れ ゴールは駐車場シェア

投稿日 : 2018年2月20日 | 最終更新日時 : 2018年2月20日

日経カレッジカフェ – 2018.02.20

http://college.nikkei.co.jp/article/111312910.html

ライドシェアや民泊と並んで注目を集める駐車場のシェアサービス。その先駆けであるakippa(アキッパ、大阪市)の金谷元気社長(33)は、全国の数ある空き地や遊休不動産を稼働率が高い駐車場に変えてきた。「大阪から世界一を目指したい」と意気込み、人と人を結ぶモビリティー(移動)のプラットフォーム作りにまい進する。

 金谷社長の略歴 2007年プロサッカー選手を目指していたが22歳で引退、上場企業に入社。09年携帯販売などを手掛ける「ギャラクシーエンジェル」設立。14年駐車場シェアサービス「akippa(アキッパ)」開始。15年 社名をakippa(アキッパ)に変更

社員のひと言が発端に


akippa(アキッパ・大阪市)の金谷元気社長

 アキッパは会社や個人が持つ空き駐車場と利用者をネット上で仲介する。2017年8月時点で1万2000拠点を確保。わずか4年弱で駐車場業界の最大手に匹敵する企業に成長した。

貸し手は場所や価格、現場写真を登録する。料金はネット上でやり取りするため料金メーターの設置も不要だ。借り手はスマートフォン(スマホ)のアプリなどから利用日や場所を検索して予約する。出先で駐車場を探す手間が省け、周辺の時間貸し駐車場より3~5割安いのが魅力だ。

駐車場のシェアサービスを思いついたのは、社員の何気ない一言が発端だった。

金谷氏は09年に携帯電話などの販売を手掛ける会社を創業。新事業を始めるため全社員で困りごとを一斉に書きだす機会を設けた。朝に起きられない、洗濯する時間がない。ひとつひとつ整理していた中で「駐車場は現地まで行かないと駐車できるか判断できない」という悩みを見つけた。

コインパーキングを導入するには初期投資が必要になるが、スマホで決済ができれば精算機の代わりになる――。

調査を進めたところ違法駐車が多い一方、空き地や空き駐車場が多いことも分かった。事業の可能性を感じ、ベンチャーキャピタル(VC)などが集まるイベントで事業計画を発表。「当時はシェアリングエコノミーなんて言葉、知りませんでした」と笑う金谷氏だが、想像以上に引き合いが強かった。

14年に空き駐車場と利用者をネット上で仲介する「アキッパ」サービスを開始。読みは的中し売り上げも増加、15年2月には株式会社に変更し、拡大を続けている。

金谷氏の強みである営業の粘り強さは、サッカー選手時代に培った。小学2年生からプレーを始め、高校卒業後には関西の地域リーグに所属。プロ契約を目指して練習に明け暮れる日々を送った。

雨の日に傘売って生活費


スマホなどから駐車場の空きが一目でわかる

 「サッカーだけではとても食べていけなかったので、アルバイトをいくつもかけもちしていました」と当時を苦笑いで振り返る。母校のサッカー部の講師を務める傍ら、早朝には弁当やピザを配達するなど、生活費の工面に追われた時期もあったという。

プロ契約に結びつかない日々のなか、サッカーを続けるために粘り強く知恵を絞った。手持ちの1000円で100円の傘を10本購入、雨の日に300円で販売したところあっという間に完売。この時に自分で付加価値をつけて商品やサービスを提供する過程に楽しさを覚え、起業を意識するようになった。

起業で成功する自信はあった。サッカーでは出場できる人数やゲーム時間が限られているが、起業にタイムアップはない。22歳でサッカー選手としての限界を感じ、起業を目標に。まずは上場会社で2年ほど経験をつみ24歳で起業した。

アキッパは経営理念として「なくてはならぬをつくる」を掲げる。以前、金谷氏が自宅で停電にあった際「電気のように世界中の人から必要とされるサービスを作りたい」と強く感じた思いを忘れないためだという。

アキッパは遊休不動産を抱える大手の不動産や、沿線の人口減で空き地が増える鉄道会社にとっては魅力的な提携相手となる。大手企業は空き地を貸し駐車場に変え、アキッパを活用して稼働率を高めることができる。JR西日本や三菱地所、阪急不動産などと提携。総額16億円以上の資金調達も実施した。

拡大を続けるスタートアップの起業家というと果敢で熱血なタイプを想像しがちだが、金谷氏の物腰はいたって柔らか。「ベイマックス」。ゆるキャラでもパワフルなアニメのキャラクターの名前で呼ばれるなど、社員から親しまれている。

駐車場や民泊をはじめ、シェアリングエコノミーは既存の産業を壊すとの意見もある。その一方で金谷氏は「需要が多い分野で補完しあえるもの」との見方を示し、ライバルではなく、より便利な世の中にするためのサービスと位置付ける。

「まずは法的に問題がない駐車場のシェアサービスを発展させ、シェアリングエコノミーで世の中がよくなる過程を示したい」。法令などから日本は海外より普及が遅いとされるシェアリングサービス。その先駆けとして金谷氏は人と人を結ぶため、柔和な笑顔を持ち味に全国を駆け回る。
(大阪経済部 土橋美沙)[日経産業新聞 2018年1月29日付、日経電子版から転載]