宿泊施設の利用に、新たに「有償での住宅宿泊」のデータが追加

平成29年11月15日、観光庁は、日本に訪れた外国人旅行客の訪日目的や主な宿泊地、消費額などをまとめた「平成29年7-9月期 訪日外国人消費動向調査」を公表した。
今回の調査から、滞在中の利用宿泊施設の選択肢として、これまでのホテルや旅館に加え、「有償での住宅宿泊」が追加されている。これは、「Airbnb」や中国の大手民泊仲介サイト「自在客」などの、いわゆる「民泊」にあたるものだ。今回の選択肢の追加は、近年急増する民泊の利用の実態を把握しようとするもので、国が公表する民泊の利用実態としては、初の報告となる。

調査結果によると、訪日外国人旅行者が滞在中に利用した宿泊施設のうち、「有償での住宅宿泊」は、ホテル(75.1%)、旅館(18.2%)に次いで12.4%と、3番目に利用率が多い宿泊施設であることが分かった。さらに、「観光・レジャー」目的の訪日外国人旅行者に限定すると、さらに多い14.9%が「有償での住宅宿泊」を利用しており、ビジネス利用などよりも、観光・レジャー目的で日本を訪れる旅行者の方が民泊を利用する傾向が高いことがうかがえる。

日本滞在中の宿泊施設利用率(平成29年7-9月期、複数回答)<BR />参照:観光庁『訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向』日本滞在中の宿泊施設利用率(平成29年7-9月期、複数回答)
参照:観光庁『訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向』

民泊の利用者と非利用者の客層や旅行内容の違いとは?

「観光・レジャー」目的で訪れた旅行客の「有償での住宅宿泊利用率」を国籍・地域別に見てみると、「シンガポール」(39.5%)が全体の約4割と最も高く、次いで「フランス」(35.9%)、「インドネシア」(29.7%)、「オーストラリア」(27.9%)となっている。訪日客数の半数以上を占める東アジア各国(韓国、香港、中国、台湾)は、いずれも12~15%と、民泊の利用においては、そこまで高くはない結果になった。
続けて、訪日外国人旅行客のうち、民泊利用者と非利用者の客層や旅行内容の違いについて見てみる。
まず、民泊利用者の年代は、20歳代以下の若年層、いわゆるミレニアル世代が61.3%を占めており、民泊非利用者の39.7%と比べて21.6ポイント高くなっている。また、民泊利用者は往復の交通手段としてLCC(ローコストキャリア)」を利用する割合が非利用者と比べて11.5ポイント高いのも特徴だ。また、同行者としては、「家族・親戚」が38.5%、「友人」が38.3%となっており、「夫婦・パートナー」は10.0%、「自分ひとり」は11.2%にとどまっている。
滞在日数の平均泊数を比べると、民泊非利用者が「5.9泊」なのに対し、民泊利用者は「7.6泊」と、1.7泊長い結果となっている。その詳細を見てみると、民泊利用者の滞在日数「7~13日間」、「14日間以上1年未満」の割合の合計が58.4%と過半数を超えているのに対し、民泊非利用者は「3日間以内」、「4~6日間」が64.0%を占めている。

幼い頃からデジタルデバイスに触れ、SNSなどを積極的に使いこなすミレニアム世代。長期滞在する上で、比較的宿泊費を抑えることができ、一般的な旅行ツアーなどでは体験しにくい宿泊先での交流が生まれやすいなど、「民泊」は「コト消費」という視点からも、宿泊先として選ばれやすい傾向にあるのかもしれない。

国籍・地域別にみる訪日外国人旅行者の「有償での住宅宿泊利用率」と、同「年代」、同「滞在日数」。<BR />
参照:観光庁『訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向』国籍・地域別にみる訪日外国人旅行者の「有償での住宅宿泊利用率」と、同「年代」、同「滞在日数」。
参照:観光庁『訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向』

民泊利用で旅行中の宿泊料金に違いはあるのか?

では、民泊の利用者と非利用者を比べた場合、滞在中の支出にどのような違いが見られるのだろうか。まずは、それぞれの一人あたりの旅行支出から見ていく。
訪日外国人旅行客のうち、民泊利用者の一人あたりの旅行支出は、「14.6万円」となっており、非利用者の15.6万円と比べて、やや低い結果となった。

費目別に見てみると、「有償での住宅宿泊」利用者の「宿泊料金」が非利用者に比べて、0.75万円低くなっている。しかし、その他の費目である「飲食費」や「交通費」、「娯楽サービス費」、「買い物代」などについては、ほぼ同程度となっている。これは、費目別の一人あたりの旅行支出の構成比を見ても同様だ。宿泊料金の構成比のうち、「有償での住宅宿泊」利用者が「25.7%」なのに対し、非利用者は28.8%と3.1ポイント高いだけで、その他の費目の構成比については、いずれも1.5%以内の差にとどまっている。
民泊を利用する旅行客は、飲食費や娯楽サービス費、買物代などを節約せずに、民泊を利用することで宿泊費を抑えようとする傾向が読み取れる。

「有償での住宅宿泊」を利用した訪日外国人観光客の一人あたり旅行支出と構成比。<BR />
参照:観光庁『訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向』「有償での住宅宿泊」を利用した訪日外国人観光客の一人あたり旅行支出と構成比。
参照:観光庁『訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向』

民泊利用者が最も訪れている地域と旅行内容は?

最後に、民泊を利用した外国人旅行客の都道府県訪問率を見てみる。最も多く訪れているのは「大阪府」(63.7%)で、他の都道府県と比べてその割合は特に高くなっている。2番目は「京都府」(48.9%)となっており、大阪と京都の近畿圏の2府が上位2位を占める結果となった。また、同じ大阪府と京都府でも、民泊の非利用者については、大阪府が44.1%、京都府が28.5%となっており、どちらも民泊利用者が非利用者よりも20ポイント近く高い訪問率となっている。
一方で、民泊の非利用者に比べて民泊利用者の訪問率が低いエリアもある。「有償での住宅宿泊」利用者の訪問率のうち、「北海道」は3.8%と、非利用者の10.9%より7.1ポイント低い。また、「愛知県」も民泊利用者の訪問率が4.0%なのに対し、民泊非利用者の訪問率が11.1ポイントとこちらも同じ7.1ポイント低くなっている。

大阪府は、2016年から東京都大田区と共に「国家戦略特区」として民泊条例が施行されており、京都府についても、特区ではないものの、国内でも有数の観光客数を誇る観光地として、違法民泊を取り締まる独自の民泊条例を早くから推めてきた自治体の一つである。こうした都道府県ごとの訪問率の差には、民泊の普及率も反映されている可能性もある。

「有償での住宅宿泊」利用有無別訪日外国人観光客の都道府県訪問率(平成29年7-9月期)<BR />
参照:観光庁『訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向』「有償での住宅宿泊」利用有無別訪日外国人観光客の都道府県訪問率(平成29年7-9月期)
参照:観光庁『訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期訪日外国人旅行者の宿泊施設利用動向』

逼迫する宿泊施設、期待が高まる2018年6月の民泊解禁

これまで、旅館業許可を得た上での営業、もしくは東京都大田区、大阪市といった戦略特区でしか認められていなかった民泊が、2018年6月15日に解禁される予定だ。訪日外国人観光客は、依然として前年比20%増で推移しており、観光庁「平成29年9月宿泊旅行統計調査・第2次速報」によれば、宿泊施設の稼働率についても、2017年9月に大阪府のリゾートホテルが94.4%、シティホテルについても89.3%まで上昇するなど、引き続き、宿泊施設不足が懸念されている。
今回閣議決定された民泊新法では、年間提供日数の上限が年間180日(※各自治体、管理組合の条件あり)という条件が盛り込まれたものの、民泊の参入によって日本の宿泊形態の慣習が変わる節目となる可能性は高い。
今後は、既存の宿泊施設との競争や多様化する旅行者のニーズに応えて、ただ泊まるだけでなく、日本文化を体験するアクティビティの提供など、いかに付加価値をつけられるかという点が今まで以上に求められてくるのかもしれない。

■調査概要
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実施:観光庁観光戦略課調査室
調査対象者:日本を出国する訪日外国人
調査場所:国内の空海港の国際線ターミナル搭乗待合ロビー(18カ所)
調査時期:平成29年7月13日(木)~9月3日(日)
有効回答数:10,010人
調査方法:タブレット端末または紙調査票を用いた聞き取り調査
旅行支出の円換算方法:円または自国の通貨で調査し、原則としてIMF(国際通貨基金)公表の日次データによる調査期間中平均値を用いて円換算

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2017年 12月25日 11時05分