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人口が増え続ける「小さな町」の熱い仕掛け

投稿日 : 2017年11月13日 | 最終更新日時 : 2017年11月13日

Forbes JAPAN – 2017.11.12

https://forbesjapan.com/articles/detail/18372

鯖江のめがねの看板

10月16日、こんな記事が日経新聞で紹介されました。

“福井県鯖江市は16日、不動産情報サイトを運営するLIFULL(ライフル)などと空き家活用に関する連携協定を結んだ。同市が進めるサテライトオフィス誘致のほか、民泊施設の開発などで協力する。雇用の創出や観光活性化につなげたい考えだ。

協定には鯖江商工会議所と楽天グループの民泊事業会社の楽天LIFULL STAY(東京・千代田)も参加する。まずは2018年1月をめどに不動産・建設業のウェブ制作を手掛けるLIFULLグループの2社が、鯖江市の空き家でサテライトオフィスを開設する(以下、略)”

鯖江でのサテライトオフィス開設は、人事評価コンサル会社「あしたのチーム」に続き2例目です。

足りないものを認め、外の力を借りる

3年ぐらい前から、鯖江、元気ですね。と言われるようになりました。

私は、10年前から「市長をやりませんか?」というキャッチコピーで「鯖江市地域活性化プランコンテスト」というイベントを開催してきました。最初は、「こんな田舎に都会の学生たちが集まって来るわけがない」と言われましたが、1年目から多くの学生たちが手弁当で鯖江までやって来てくれました。



これまで、全国から集まった優秀な学生たちは237名。ユニークな活性化プランを提案してくれました。そしてたくさんのプランが行政、市民の手で実現されました。その学生たちが、「地域活性化プランコンテスト」という仕組みを自分たちの地元に持ち帰り、今では全国で似たような取り組みが開かれています。

もう一人、地元のIT企業「jig.jp」の福野泰介社長も10年以上前から「鯖江をシリコンバレーにする」と言い続けてきました。その目標に向けて、私たちはオープンデータ推進、電脳メガネ(ウェアラブル)開発の推進等をお手伝いしながら、中(地域)はもちろん外にも目を向け発信を続けてきました。大手企業やベンチャー企業の方を鯖江にお招きしイベントを開催したり、その際には鯖江を案内しておもてなししたり。

特に戦略があったわけではありません。「鯖江を知ってほしい」「鯖江に来てほしい」と続けていたら、「鯖江ファン」が増えていきました。その鯖江ファンがインフルエンサーとなって、鯖江の取り組みを紹介してくれたり取材してくれるようになったのです。

私たちの取り組みに共感してくれたのは、大手企業でした。SAPジャパン、レノボジャパン、伊藤園、JMといった企業が、鯖江市地域活性化プランコンテストのスポンサーになってくださりました。まさに渦が広がっていくようでした。企業さんの仲間がどんどん増えていき、それが一つの形として結実します。

戦前、市内に建てられた旧鯖江地方織物検査所という古い建物を、オープンイノベーション推進施設「Hana道場」として使わせてもらうことになったのです。これは、SAPがドイツとシリコンバレーに開設しているオープンイノベーションのための施設で、鯖江が世界で3番目となります(この連載で「Hanaオープンイノベーション道場」の取り組みは少しずつ紹介していこうと思います)。

地方に圧倒的に足りないものは何だと思いますか? 人材? 情報? 予算?

もちろんすべて足りません。決定的に足りないのは、「知恵」と「経験」です。それを認めた上で、外の力を借りる。そして受け入れる。そしてやってみる。外(よそ者)からの意見を受け入れ、「まずはやってみる」という雰囲気と仕組みを私たちは作ってきたと思っています。

鯖江市は人口7万人弱ですが、市制施行以来60年、人口が増え続けています。また、たくさんの企業さんが鯖江に来て下さって一緒に様々な取り組みを行ってきました。しかし、ここ数年企業誘致を行ってきたもののなかなか実績に結び付かなかったのも事実です。それがやっと実を結んできました。

今年7月と8月に鯖江市は、「お試しサテライトオフィス」モデル事業(総務省)の採択を受け、
・「空き家、空き室」問題への対応
・進出企業と市内企業との新たなビジネスマッチングの創出
・進出企業による雇用促進・人材確保
をテーマに、「空き家」を活用したサテライトオフィス誘致に向けた具体的なスキームの検証を行いました(市の単独事業として来年3月まで延長実施中)。

行政頼りでなく、行政と共に

結果、空き家4棟に2ヶ月で33社の企業の方々が鯖江でお仕事体験をされました。LIFULL、あしたのチームもお試しサテライトオフィスで鯖江に来られたことがきっかけで、冒頭で紹介したように今回のサテライトオフィス開設に繫がったのです。日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営するLIFULLは、鯖江で若者・子育て女性の雇用創出とキャリア支援に取り組んでいくそうです。

実はLIFULLは、2008年に開催した鯖江市地域活性化プランコンテストに協賛してくださっていました。第1回プランコンテスト開催後、LIFULLが当時入っていた晴海トリトンのオフィスで、井上社長も一緒にプランコンテスト参加者と地域活性をテーマにワークショップをさせていただきました。

あれから10年、先日、私は井上社長と10年ぶりに鯖江で再会しました。2008年に私たちのプランコンテストに参加してもらい、今度は鯖江にサテライトオフィスの開設。10年越しの巡り合わせに感慨深く感動しました。そして、どうしてもお伝えしたいことがあり話しかけました。

「覚えていらっしゃらないと思いますが、私、お会いしているんです。10年前、鯖江市地域活性化プランコンテストに協賛いただきありがとうございました。おかげ様で10年続けることができました。第1回があったから今の私があります」

井上社長は、鯖江に来られる前に調べていたらしく、「写真あった! 見たよ。うちでワークショップしたよね。よく10年も続けてきたね、凄いね」と笑顔でおっしゃってくださいました。

当時は、前に出るタイプではなく裏方でいたため、井上社長とは挨拶しただけで、「大きな会社の社長さんだ!」と遠目で見ながらとても緊張していたのを覚えています。そして、「10年続けた」私よりも、企業として10年にもわたって地域の取り組みに関わってこられたことに私は社長の意志の強さを感じたのです。


「鯖江市地域活性化プランコンテスト」参加者の集合写真

「鯖江市を活性化させるためのプランコンテストに、よく大手企業がスポンサーになってくれたね」と言われますが、私もそう思います。行政「頼り」ではなく、行政、地域の方々と「共に」全国を意識しおもてなしを行ってきたことが、企業を巻き込むことができるコンテンツを創れたのだと思います。

そして、前例がない新しいことも積極的に受け入れ、企業と共にチャレンジしてきたことで、鯖江であれば何かできるのではないか、何か一緒に創れるのではないか、というイメージができ今回のサテライトオフィス開設につながったと思います。

地域の人とで創る協創から、企業×地域モデルの創出へ。やっと第一歩。

文=竹部美樹