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中国の民泊大手「途家(トゥージア)」の日本戦略をトップに聞いてきた、中国人旅行者の民泊需要の高まりから自社管理物件の展開まで

投稿日 : 2017年3月31日 | 最終更新日時 : 2017年3月31日

トラベルボイス 2017年3月31日

中国の民泊大手「途家(トゥージア)」の日本戦略をトップに聞いてきた、中国人旅行者の民泊需要の高まりから自社管理物件の展開まで

いよいよ「住宅宿泊事業法案」(いわゆる民泊新法)の運用が始まる。法整備よりも実態が先行し、さまざまな議論を呼んできたが、政府が2017年3月10日に新法案を閣議決定し、今後は一定のルールのもとで民泊が合法化されることになる。

このときを待ち望んでいた民泊プラットフォームは多い。そのひとつが、中国最大手の「途家(トゥージア/Tujia)」だ。

昨年4月に日本法人「日本途家」を立ち上げ、法整備の行方を見守るとともに市場調査を行ってきた。同社はアジア数カ国に現地事務所を置いているが、現地法人を立ち上げたのは日本だけ。同社代表取締役の鈴木智子氏は「海外マーケットでは日本が一番大きい。日本の取り組みは、今後の海外展開の先例になるのではないか」とみる。

中国の民泊事業者は日本でどのような未来図を描いているのだろうか。

日本での民泊需要拡大を見据え、ホスト募集加速
途家によると、2016年10月現在でグループ全体の民泊物件数は国内335都市、海外67カ国で約45万件。ゲストは中国本土の旅行者がメインになる。日本の物件もすでにリスティングに載っており、そのホストの大部分は日本在住の中国人あるいは日本に帰化した中国人だという。

日本途家の役割は、日本で民泊を提供する物件とホストを増やしていくこと。鈴木氏は「これまでは法律の問題があったため、市場調査を中心に活動を行ってきたが、民泊新法の成立を見据えて、今年から本格的な事業を開始する」と意欲を示す。

今年2月にはホスト募集のための日本語サイトもオープン。これまでもプラットフォーム上に日本語の登録フォームは用意してあったが、専用サイトを立ち上げることで物件募集を加速させていく考えだ。

その背景にあるのが、日本での中国人旅行者による民泊需要の高まり。昨年の訪日中国人旅行者数は約630万人。旅行形態が団体から個人化している中で、家族旅行や友人同士など3〜4人のグループ旅行が増え、ホテルよりも民泊の方が滞在スタイルやコストの面で好まれる傾向にあるという。

代表取締役の鈴木智子氏とマーケティング部マネージャーの釘崎慎也氏
「中国のアウトバウンド旅行者は1億2000万人。そのうちたった5%ほどしか日本に来ていない。今後さらに日本を訪れる中国人は確実に増えていく」とマーケティング部マネージャーの釘崎慎也氏は話す。さらに、将来的にはアジアの中国語圏でのビジネス拡大も見据えており、その潜在需要を加味すると、「とてつもない市場になる」と未来図を描く。そのため、ホスト募集では「(他社と比べて)高価格でも、お客を呼べるプラットフォーム」として訴えていきたいとする。

ホストに対するコミッションは3%。中国本土の12%と比べるとかなり低く設定した。今年5月までは0%とし、プロモーションを強化していく。

旅館との連携や自社管理物件にも意欲、自治体との連携も
日本途家では、一般住宅のリスティング(掲載)に加えて、旅館業法上の宿泊施設との連携や自社管理物件の取り扱いにも力を入れていく。

今年に入って、高級宿泊予約サービスのReluxと業務提携。Relux掲載対象施設のうち約700軒の一流旅館の掲載も始めた。「この提携によって、日本独自の旅館体験を中国人に提供することができるようになった」と釘崎氏。背景には、モノからコトへと変化する中国人の旅行ニーズがある。

また、自社管理物件については、すでに中国国内で実績があり、そのノウハウを日本でも生かしていく方針だ。「物件を買うのか、借りるのか、さまざまな方法があるが、いずれにせよ、日本文化を感じられるものを増やしていきたい」とその方向性を示す。

現在のところ、日本の物件(ホスト)は東京、大阪、京都が多いという。今後は供給が逼迫する大阪をはじめ、北海道、沖縄、箱根、長野などのリゾート地で物件を増やしていく方針で、2020年までに5,000軒の登録数を目指す。「単なる宿泊だけでなく、その土地の周辺を含めて地方創生につながるようなインバウンド需要を誘致していきたい」と鈴木氏。実際に市町村自治体とも連携の話を進めているところだという。

物件の質も管理、日本では管理会社設立でトラブル対応
日本途家では、ホストの増加だけでなく、物件の質の管理も同時に注力していく。同社の北京本社には、登録物件の審査セクションがあり、ホストの登録を一元的に管理。ルールの順守を促し、必要であれば改善を求めることもあるという。プラットフォームの肝であるレビューによるチェックに加えて、「自社による管理でトラブルを未然に防ぐ仕組みを構築している」と自信を示す。

それでも、トラブルは起きる。チェックイン時の鍵の受け渡し、ゴミ出し、騒音など実用上の問題は、登録時に未然に解決することは難しい。そこで、日本途家では日本独自の取り組みとして、今年3月には管理会社を立ち上げ、4月にはカスタマーセクションの業務を開始する。鈴木氏は「日本には日本のトラブルがあり、またニーズもある。それに合わせたサービスを展開していきたい」と話す。

途家は中国最大のOTAシートリップとも資本関係にある。鈴木氏は「中国人向けのサービスとして、今後いろいろなことが考えられるだろう」と意欲的だ。シートリップは、旅行比較スカイスキャナーを買収するなど、多角的に旅行ビジネスを拡大させている。民泊分野ではどのような新サービスが展開されるのか、今後に注目だ。

聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫
記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹