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[震災8年]被災地 シェアエコの芽

投稿日 : 2019年3月11日 | 最終更新日時 : 2019年3月11日

[YOMIURI ONLINE]

2019/3/11

民泊・服・車…助け合い

 東日本大震災から8年となり、沿岸部を中心に壊滅的な打撃を受けた東北経済も、復興への歩みを着実に進めてきた。助け合いの意識から、被災地では、個人の遊休資産を共有する「シェアリングエコノミー(シェアエコ)」の取り組みが芽吹き始め、自立を模索する動きも広がっている。

 ■鉄の街で交流

 明治時代から官営製鉄所が操業し、鉄の街として知られる岩手県釜石市。この地で佐々木雄治さん(63)は2017年秋、太平洋を見下ろす高台に整備された復興団地に自宅を再建した。

 18年8月からは、民泊として宿泊者の受け入れを始めた。地元産のスギをふんだんに用いた2階建てに、4人部屋の和室と洋室がある。これまでに延べ約120人が宿泊し、外国人も約2割を占める。

 釜石市は、1970~80年代にラグビーの日本選手権を7連覇した新日鉄釜石の拠点で、秋に日本で開催されるラグビー・ワールドカップ(W杯)で東北唯一の試合会場となる。約1万6000人を収容できるスタジアムがあるのに対し、地元の宿泊収容能力は1日約1400人にとどまる。

 市は特定のイベント開催時に限り、民家を宿として来訪者に提供する「イベント民泊」などの準備を進めている。民泊をきっかけに地域住民に観光振興に興味を持ってもらい、W杯終了後も交流人口の拡大につなげたい考えだ。

 佐々木さんは「人々の交流拠点として防災教育などを含め、語り部として地域のガイド役も担っていきたい」と話す。震災のあった3月はいったん民泊を休業しているが、4月に再開する予定だ。

 ■「みんなのたんす」

 宮城県気仙沼市の中心商店街の一角に、「みんなのたんす」という看板を掲げた10坪ほどの店舗がある。店には、お下がりとして引き取った、乳幼児から小学生ぐらいまで着られる子供服約300着がそろう。

 年間5000円(上限120着)か、月額1000円(同15着)の会費を支払って会員になると、子供服を持ち帰ることができる「会員制の古着屋」だ。店を一人で切り盛りする高橋えりさん(27)は、「子供服が買える店が少ない気仙沼で、古着を有効活用できる仕組みを提供したかった」と狙いを話す。

 復興庁が主催して2017年に行ったシェアエコに関するサービスのアイデアを競うイベントで、最優秀賞を受賞。地元NPO(非営利組織)の支援を受けて昨年4月に開業した。

 現在の会員は、市内の未就学児をもつ母親を中心に十数人。会員も子供が着なくなった古着を店に寄付するほか、趣旨に賛同して東京や北海道など全国の家庭から古着が届くという。

 高橋さんは今年夏の出産を控え、5月初めにいったん閉店し、出産後、自宅近くに店を移して再オープンを目指している。「口コミを大事にしながら活動を広めたい」と、新サービスの定着に意欲的だ。

 ■市場倍増の予想

 気仙沼市役所の駐車場に止まる2台の小型車は、週末や祝日に、住民や観光客の「足」となったカーシェアリングの車だ。

 公用車は市職員が平日、公務に使うものの、閉庁日はほとんど利用されなかった。この点に着目し、昨年9月から、市職員が使う車の一部をカーシェアリングで代替する実証実験を半年間行った。市民らの移動手段の確保と行政の経費削減の両立を目指して取り組んだ。宮城県内のレンタカー会社が運営するサービスへの会員登録と事前予約をすれば、利用時間や距離に応じた料金で誰でも利用できた。今月8日に実験を終えたが、同市はこれから本格導入を検討する。

 矢野経済研究所によると、シェアエコの国内市場規模は16年度の539億円から、18年度は824億円へと5割増える見込みだ。20年度には1129億円と、16年度比の2倍に拡大すると予想されている。

 気仙沼市地域創生係長の佐藤充浩さん(42)は、「震災を経験して互いに助け合う、困っている人を何とかしなければ、との思いが街全体で強くなった」と話す。シェアエコの取り組みは、被災者の思いも映しながら、新たなビジネスとして地域に根付き始めている。

 ◆シェアリングエコノミー(シェアエコ)=住居や乗り物、衣服などを貸し借りしたり、共有したりして有効活用する経済活動のこと。個人の空き部屋を貸す「民泊」や、複数の人が1台の車を共有する「カーシェアリング」が代表例だ。運用区域内に複数の駐輪場を設けて自転車を貸し出す「シェアサイクル」も普及している。